情報の真偽を見極める力量もピンからキリまで

2022年05月09日
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株式投資
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出典:日本証券業協会「個人投資家の証券取引に関する意識調査」

ある投資関係のサイトを読んでいたら、「個人投資家の9割は負けているというけどその根拠はなく、実はもっと勝っている。株で勝つためには真偽を確かめる力が必要」と書かれていてその根拠としてこのグラフをあげられていました。2020年売買で損失を出した投資家は約10%だけだから、9割も負けていないと言いたいようです。9割負けるが正しいか間違いかはわたしも詳らかにはわかりませんが、わたしは記事を読んで瞬間的におかしいなと感じました。理由はいくつかあります。

1、個人投資家が負けるという表現はその個人の長い投資履歴の中で語られるべきで2020年の単年度で結論が出せるはずがない。もしこのデータの意味を考えるのであれば過去の古いデータも可能な限り検証して比較するべきである。しかしそれをしている様子がない。

2、このレポートは日本証券業協会という業界の利益を代表する団体が作ったものである。証券業界に有利なようにレポートが作成されるのは当然であり、中立的な立場からの発信とはみなしにくい。

3、あくまでも個人投資家へのアンケート結果であるから本当のことを言っていない可能性がある。競輪ファンにインタビューをしたら多くのファンは収益がトントンと答えているが実はそれは嘘で、ほぼ99%が負けている。お金の絡む話で匿名のアンケートであるのでこのまま受け取れない。

4、そもそもこのデータは実現損益だけの話である。含み益も含み損も反映されていない。多くの個人投資家が損きりせずに塩漬けを選ぶ傾向を考えると実現損益だけで勝っている負けているを結論づけるのは無理がある。

ぱっとこれだけ感じました。それで実際の日本証券業協会作成の元データにアクセスしてみました。

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2006年から毎年出されていて
これがその10年ほど前のデータ

2020年ではなく試しに10年前のデータを確認してみました。平成21年では損失を出した人が利確した人より倍くらい多いですね。加えて売買をしなかった人が2020年よりはるかに多い。その多くは塩漬けしていると推測できます。これだけ見ても2020年のデータだけで判断することがいかに危ういかわかります。そもそもアンケートの設定でなぜ実現損益だけ尋ねるのでしょうか? 通算で勝っているか負けているかなぜ聞かないのでしょうか? たぶん日本証券業協会はそれを訪ねたくないのでしょう。聞きたくない答えが推測できるなら聞かないのが賢明です。株式投資で9割負けるという話を盲目的に信じるな。自分でデータを検証せよと言っていますが、たしかにそこは間違っていませんが、その検証もまともにできなければおかしな答えが出てきます。逆に自信満々になる分危険とも言えます。

わたしの場合は高校や学生時代の同級生で証券業界や金融機関に行った同級生が何人かいます。またいろんな趣味の交流の中で証券マンに出会うこともあります。また証券業界から転職してきた人間を同僚としたこともあります。そこで彼らに会うと聞いています。実際個人投資家ってどれくらい勝ってる負けてると。いろんな答えが返ってきますが、大多数は負けているで間違いないという一致した答えです。特に10年くらい前はほとんど負けていて、勝っているのは百人に一人とか聞きました。ここ数年は個人投資家の成績はこの数十年の中で良い方じゃないでしょうか? でもこれから20年30年後に勝ったと言える人がさてどれだけ残るか? 今の時代はネットで簡単に情報が入る代わりにそこから安易で間違った答えが引き出される可能性が高くなっています。そしてそれがもっともらしくネットで拡散される。真に受ける人間もいる。まさに情報の真偽を見極める力が問われる。そのフレ-ズそのものにはまったく同意します。まあ人間関係の広さは真偽を見極める力に確実に影響があると思います。いくら情報が大事と言っても自室に篭ってネットばかりではね。

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