事例「日本証券業協会の意識調査」思惑の隠れる数字に騙されない知恵を持ちたい

2023年09月14日
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株式投資
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日本証券業協会という業界団体が個人投資家の意識調査といういわゆるアンケートを毎年実施しています。5000人ほどにネット経由でいろんな質問をしてその答えをまとめている。参考になる数字も多いけど扱いに注意すべき数字もある。例えば「昨年一年間で売却益がでましたか?」という質問があります。これで個人投資家はけっこう儲かっているという結論を読み手が出すとしたらどうでしょうか?
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人間はこういう自分のパーフォーマンスに関わる質問について匿名で証拠もなしに答える場合は話を盛る傾向があるというのは知られた話で、たとえば競輪ファンに似たようなアンケートをするとトントン、あるいは少し儲かったと答える人が60%とか70%くらいいます。実際はトントンとか儲かっている人は100人中5人もいません。あくまでもアンケートでそう答えたというだけのことです。株式の売却益も取引記録を添付するわけではないので、本当のことを答えたかどうかは割り引いて考える必要があります。アンケートの数字には嘘はないけどアンケートに対して事実を述べたかどうかの保証はどこにもないということです。

さて「昨年一年間で売却益が出ましたか?」と言う質問は含み損については何も聞いていません。聞く方が上手に避けたとわたしは感じます。都合の悪い数字が出てくる可能性がある質問はしないのです。なぜなら日本証券業界はあくまでも業界の利益を代表する組織で証券業界に資金を呼び込みたいと顧客を増やしたいという立場の組織だからです。誰でも想像できるとおり日本の個人投資家の多くはプラスになっているから売ります。マイナスだとプラスになるまで待ちます。だから売却益をが出たと答えても、儲かっているかどうかは別の話ということです。ではと例えば10年間毎年5000人に聞いたから合計5万人で数字をみたらどうだろうという見方をする人もいます。10年で見ても売却益が出ている人が多いのだからたぶん儲かっている人が多いだろうという推測を引き出しがちですが、これは数字の扱い方が間違っています。同じ人に毎年同じ質問をしたわけではないからです。あくまでもその年にネットで5000人を集めただけです。単年度の数字を10年まとめたからと言って長期的な意味を持つことにはならないのです。

最後にアンケートに答えた5000人の集め方ですが、すべてネットです。なおかつNHKの世論調査のように例えば任意に抽出した1万人のうち5千人から回答を得たというような説明がどこにもありません。もしも任意に答えたいという人間を集めたのであれば、その回答結果は相当偏る可能性があります。このあたりを日本証券業協会は明確にしていませんが、たぶん任意で答えているという想像は容易にできます。質問が大量だからです。その場合ネットに自らアクセスしてアンケートに答えてくる層はどちらかと言うと成績が良い人間になりはしないかというのは想像に難くない。少なくともこのアンケートの母数の集め方が明確に表示されていない以上個人投資家の全体像を語っているという結論ずけはできないと思われます。このように一見事実を淡々とまとめたアンケート結果だと言ってもそこにはいろんな思惑が隠れているわけで、業界団体の行ったアンケートの数字をそのまま採用して日本の個人投資家の多くは儲かっているという結論を出すのはこれは数字に騙されているかもしれません。そもそも株式投資で儲かるかどいうかというのは一人の人間の一生を通じて判断されるべきもので単年度のアンケートで軽々な結論を引き出すべきではないと思われますが、あたかも客観的な事実かの如く発信する数字の扱い方を心得ない人間もネットでは跋扈しています。騙されないように十分ご注意あれということです。

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