自動車メーカーの減産はいつわかるものなのか?
2021年08月29日
トヨタが9月の減産を8月後半になって発表したわけですが、それくらいでしかわからないものなのか?という質問を読者から受けました。わたしが自動車業界にいた経験から言うと、わたしは今回の件は取引企業には2ヶ月くらい前には知らされていたと想像します。(わたしはもう引退しているから想像としか言えない)自動車業界で働いている人なら誰でも「さんぱつ」という言葉はご存知でしょう。3か月内示と言っては自動車メーカーが出す需要予測で、すべての納入企業はさんぱつに基づいて生産調整を行う。水害とか火災さらに災害で突発的な影響を受けることはありますが、半導体不足については今月起きた事件ではありませんので、今回の場合はたぶん6月かまたは7月のさんぱつでは提示されていたということです。そうするとその情報はたちまち下請けにも展開されます。自動車メーカーとの直接取引先を Tier1と言います。その下請けはTier2,そのまた下請けはTier3なんですが、各レベルでかならず、三か月内示は出すからです。
そういう情報というのは草の根のように伝わって、例えばお父さんが奥さんに、この先残業代は期待できないと言うとか、逆に忙しくなるから旅行に行けないとか、別に減産増産なんて言葉を使わなくても、ああ生産が増えるんだな、減るんだなと伝わっていくわけで、大きな変動ならたぶんトヨタグループだったら家族も入れると軽く100万人くらいはすでに知っている情報のわけです。生産計画なんてのは厳密に言うとインサイダー情報ですけど、決算情報とか開発情報などと比べると一番漏れやすい情報です。100万人も知っているということはすでにインサイダー情報とは言い難い部分もあるわけだし、それこそさんぱつの数字がそのまま流出しない限りはお咎めになることはないでしょう。
ただ問題なのは、そんな多くの人が知っているような情報でも、それがもっと多くの人に向かって報道されるとその時々の投資家のマインドとか市況とかで、いろいろその時の受け止められ方は変わってきて、あらこんな情報で市場はこんな反応をするんだってことになるわけです。当然大口の機関投資家とかファンドマネージャなどは知っていると思われる情報ですから、それを利用して儲けようというプロがいて不思議はないという気はします。そうやって仕掛けられていくってことなんでしょうね。
あらかじめうまいこと内部事情を知ったらそれを使って株で儲からんかと考える人もいて、うまい情報に飛びつきたくなるってのはあるでしょう。投資関連というのはいろんな噂を耳にすることがあるわけです。その時に情報の信憑性を高めるために、「親戚がどこそこ銀行なんだけど、」とか「知り合いがトヨタなんだけど」とかいかにも内部の事情をわきまえていると、聞いた人間に思わせるようなポップ?がついてくることがあるわけです。下手すると知り合いの知り合いとか、でもそれなりに信憑性があるかのごとく語られる。実際わたしも聞いたことがあります。ネットなんかそんな話がやまほどでていて、いかにも自分は知ってるんだと言いたげな人もいる。でも仮に知り合いがトヨタだと言ったところで、トヨタのなんだか全然わからない。自分がトヨタですが、、て情報流す人いないでしょ。
そもそも会社の事情を本当に知っている人間なら自分の会社のことなんか滅多なことではしゃべらないのです。会社というのは上に行けば行くほど口が堅い。わたしがいた会社もけっこう大きかったし取引先も有名企業ばかりでしたが、相手が親戚でも友人でも業界や会社の裏事情なんてまず喋りません。ということでもっともらしく流れ出るその手の情報はあまり価値がないと思ったほうが良いということです
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