企業はどうやって成長する?
2021年08月18日
よく何年連続増収増益だから成長企業だとか言う個人投資家さんは多いのですけど、その成長の中身を分析して実態を理解する努力をする投資家はどれほどいるんでしょうか? わたしはもう10年以上毎年売り上げを伸ばしているあるアメリカの会社を知っています。その会社はどうやって伸ばすかというと、毎年のようにM&Aで会社を買うのです。それで買った会社をリビルドしたりあるいは製造拠点を移転してうまく会社に吸収させるんだけど、なかなかそんなうまく行くもんじゃない。そこでまた新しく会社を買う。それをずっと続ける。リストラもやる。そんなことで経費もかかるので会社の利益そのものは売り上げほどは伸びていきません。そもそも売られる会社というのは競争力がない会社なのです。でもその会社の株価は伸びています。投資家は成長企業と判断しているのです。別に企業買収がダメだと言っているわけではありません。自分の事業を補完する好例もあります。でもそうでないものもとても多い。競争力のある企業はそんな売りにでないのです。
不動産業で借金をして物件を買うけど数年すると競争力がなくなって空き家が増えたり家賃を下げたりしないといけなくなる。それを吸収するためにまた借金して新たな物件を購入する。その物件は新しいので満室になりキャッシュフローが一息つける。ところがまた数年すると同じことの繰り返し。それでどんどんと物件を増やしているメガ大家というのがいます。借金づけの自転車操業です。それでも売り上げは伸びていくから成長している成功例としてもてはやされたりする。上のビジネスモデルと似ていますね。
オーガニックグロースという言葉をご存知でしょうか?その会社がコアのビジネスでどれだけ成長をしているかというのがオーガニックグロースです。会社を買収したり新規事業に参入するのとは区別しないといけません。ある牛丼チェーンが売り上げを伸ばすために新たなメニューを開発したりあるいはキャンペーンを打ったりして売り上げを伸ばすのがオーガニックグロース。それとは別にうどん店を買収して一気に出店しても、それはそんなことすれば売り上げそのものは伸びるに決まっているんですけど、事業がうまくいっているかどうかは別の話のわけです。
オーガニックグロースもふたつにわけることができます。マーケットグロース(市場の成長)とペネトレーション(市場占有率)です。会社がぼけっとしていてライバル企業に出し抜かれても市場が伸びていれば会社も伸びていきます。でもライバルはもっと伸びていくから実際は負けている。逆に市場の伸びを超えてライバルに打ち勝って市場占有率を上げて成長する企業もある。伸びるマーケットで競争力のある成長が本物ですが、こうやって成長企業だと言っても、市場とライバル企業とよく観察比較して中身を吟味しないと株式投資はできないと、わたしはそう思っています。わたしにとっては当たり前のことですけど、こういうのが投資家として基本とはなかなかならないってのは不思議です。
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