山口百恵さんと自分の人生を重ねて考える

2021年04月24日
4
人生の考え方

かみさんと埼玉ー那須のドライブ中によく聞くミュージックは古い歌謡曲です。理由は懐かしくて案外眠気防止に役立つからです。ニューミュージックなんてカテゴリーですけど実にオールドですね。アマゾンミュージックで再生するんですけど、最近は山口百恵さんの曲がたくさん再生されます。なんかサブスクリプションで開放されたんでしょうか? それで今更ながらに彼女の曲を聞くと、未成年のティーンエージャーが歌っているとは到底信じられません。

彼女に歌を提供したミュージシャンは当時でも一流どころ。歌謡曲に疎いわたしでもそうそうたる面々が並びます。阿木燿子ー宇崎竜童、さだまさし、谷村新司、松本隆ー平尾昌晃、等々、時代を代表するミュージシャンが渾身の力を込めて作った楽曲も、まるでその製作者と同世代かむしろ年長者ではないかと思わせるくらいに、彼女は情感込めて歌いきってしまう。まさに入れ物としての稀代のスケールを感じさせるわけです。未婚なのに未亡人の歌をまるで経験しているかのように歌いこむ。年齢なりの可愛げがないと言えるのかもしれませんが、それは天才を評する言葉としては的外れでしょう。

山口百恵さんは実はわたしと同級生です。若い頃は歌謡曲に興味もなかったので彼女についてなんとも思いませんでしたが、この歳になって聞くと良い曲が並び彼女の表現力は瞠目ものです。最近わたしが気に入った曲は、夢先案内人。30代なかばから40歳くらいの人の歌声に聞こえますけど、実は当時の彼女は18歳とかのわけです。信じられません。どんな作者の曲も歌いきってしまう、まさに入れ物としての度量を感じさせる。その器の大きさはどこから来たのでしょうか? そこでヒントになるのは彼女自身が書いた自叙伝です。と言ってもわたしは読んでませんが、少なくともその自叙伝で彼女は自分の生い立ちについて触れているようです。不倫の結果生まれた子どもであり、またとんでもない父親であったとのこと。過酷な幼少期がむしろ天才を育てたのではないかとわたしなどは感じいってしまいます。

彼女は20歳を過ぎて早々に結婚をして芸能界を引退します。彼女はたぶん普通の家庭に憧れてそれを実現したかったのではないかとわたしは想像しています。私自身の実感がそうだからです。過酷な幼少期を経るほどに、普通でない自分が悲しくそして普通でありたいと強く願う。わたしの原始心象風景がまさにそれです。ただ普通になるためには普通ではいられないのです。わたしは到底普通とは言えない人間性を有して、それでもって過去の普通でないを払拭して、ようやく普通と思える気分になれた。彼女の芸能界での活躍はまさにわたしの数倍以上の普通でない領域じゃないでしょうか? 

ただひとつ彼女にとって決してラッキーだったとは言えず、わたしのほうが巡り合わせに恵まれたかもと、思う事柄があります。それは彼女はわずか20歳そこそこで実の父親を決して許さずに縁を絶ったということです。彼女は20歳で余人が得難い成功を手にして、自分で自分の人生観通りにできる自由を得たからでしょうか。自分が幸せな家庭を得る前に、人生を総括してしまったのです。もしもですが、わたしが彼女と同じ年齢で相当の成功をしていたら、わたしもきっと親を切ったんじゃないかなと思います。それくらいなんとも身勝手な両親だったから。ただ私の場合はそうとはいかずに、自ら社会経験を得てそれなりの成功はまだ手に入らないのがかえって良かった。20歳という年齢は彼女にとっても誰にとっても人生を総括して重要な結論を出すにはあまりにも早すぎたとわたしなどは思わずにはいられません。

結局どんな親でも大切にするのは自分のためであり自分の納得であり、そして自分の美意識とか価値観が寄与している。もっと言うなら大切な家族のためでもある。親を切るというのは尋常な決断ではありません。その悲しい心情を自分の家族に知らせ同意させることは、わたしの悲しみを共有させることになります。そんなこと愛する家族にわたしはさせたくありません。悲しい思いは私一人で十分なのです。そしてその悲しい過去と180度決別するためにわたしはコペルニクス的発想の転回を得た。まるでお世話になった親かの如く自分の親と接した。

今でもわたしの実母のまっちゃんはずいぶんと間抜けなことを言います。わたしが親を大切にする優しい子どもになったのは自分の育て方が正しかったからだと4歳の私を捨てた彼女は言うのです。わたしは笑って聞いてあげます。まっちゃんに分かれというのは無理な話です。わかるくらいならわたしは別の人生を歩んでいたでしょう。でも不思議な縁です。その御蔭で今のわたしがある。そこに感謝の気持ちも生じます。夢先案内人、って聞いてきて体が緩む気がします。暗い影など微塵も感じさせません。だからこその山口百恵なのかなと、それこそ誠に遅ればせながら妙な得心を得る。「生きてることの喜びに言葉をなくす 夜明け前です。」いい歌詞ですね。
関連記事
ハルトモ
Posted by ハルトモ
自由人ハルトモ。那須とさいたまを毎週往復するリゾート&リタイアライフ、そして旅、投資ネタもありのブログです。
自己紹介へ

Comments 4

There are no comments yet.

金田勘十郎  

「その悲しい心情を自分の家族に知らせ同意させることは、わたしの悲しみを共有させることになります。そんなこと愛する家族にわたしはさせたくありません。悲しい思いは私一人で十分なのです。」
 この一節、私の心に刺さりました。
 
 まだ私は、この境地を我が物にできていませんので、これ以上のコメントは控えます。一言だけ申し添えますが、気持ちがとても楽になったことだけは、お伝えいたしたく。

 ありがとうございました。

2021/04/24 (Sat) 22:50
ハルトモ

ハルトモ  

Re: タイトルなし

まあ書き物ですのでお気楽にお読みくださいませ。

2021/04/25 (Sun) 18:42

のらねこミーコ  

読み応えありました

すごく読み応えを感じました。
素晴らしい読み物です。

私も山口百恵が大好きです。
女性としても魅力的ですが、やはり、彼女自身が歌った曲の素晴らしさですね。
彼女の情感たっぷりの歌唱力と曲の素晴らしさは何度聴いても飽きさせません。

2021/04/26 (Mon) 10:25
ハルトモ

ハルトモ  

Re: 読み応えありました

そうですか、お気入りいただいて良かったです。他にもよく書けているものもありますのでよろしければごゆっくりとお読みくださいませ。古い方がいいかもしれません。

2021/04/27 (Tue) 13:00

コメント投稿