主張への批判と人格の否定は激しく混同される
2021年01月29日
本田宗一郎さんの肉声の録音テープというのが残っていてホンダの研究所に併設された展示ブースでいつも流れていました。打ち合わせのために頻繁に通っていましたので、なんだかんだでほとんどの録音は聞いたと思います。その中で非常に参考になってわたしの行動に影響を与えたものがあります。ある社員が工場の製造工程で事故とも言える大きなミスを起こした。そこで本田宗一郎氏がなぜ、そんな事故が起きたのか、それをしつこく聞いたわけです。納得するまで細部にわたり聞くわけです。それを見ていて他の社員が、可哀想にあんなに謝っているんだから許してやればいいのに、そう言ったんだそうです。そこで宗一郎氏が言い返した。二度とこんな事故を起こしたくないからその原因を探求して改善をしたいのだ。別に人を責めるのが目的ではない。そんな経緯を宗一郎氏が語っていたわけですが、これは今のホンダという会社の風土にもなっていると思います。まあ罪を憎んで人を憎まずということです。
人間というのは自分がした発言とか行動を批判されると、自分という人間自身を否定されたと感じる人がけっこう多くいるわけです。そういう方々と問題解決にあたり建設的な議論をするのは非常に難しい。失敗の理由を聴いているだけなのに、涙ながらにごめんなさい、とか自分の責任じゃないとかでは解決にならないわけです。児童養護施設でも勤務しましたけど若い女性職員などは担当の子が問題を起こすと、なきじゃくって謝るけど原因が突き止められない。それで話が終わってしまうのでまた似たような問題が起きる。そのまた逆のケースがあります。ある人物が言っている内容が気に食わないと、その内容を批判するのではなく、言った本人個人を否定するという人間がこれまたたくさんいます。内容が気に食わないなら内容について語れと本田宗一郎氏ならきっと言うでしょう。個人を否定しても建設的なものはなにも生まれないのです。
ブログとかツイッターなどのネット社会でもこの個人否定と主張批判が激しく混同されています。たとえ個人であっても主張をする以上それは批判されるのは当然ありえることです。自分はそう思って勝手に一人でやっていますというなら批判はできませんが、多くの人に影響を与えることを目論んだ主張が個人によって発信されるなら、それは間違っていたりおかしなことだったら影響を受けた人間の不利益にも繋がりますからそれは批判するのは公共の利益に適うわけです。ただ批判と人格否定とか誹謗悪口とはまったく別物です。いくら言っている内容がおかしくても個人の人格否定を正当化する理由になりません。
株ブログは魑魅魍魎が跋扈する世界でいろんな情報が錯綜しています。批判を招く文章も多いと感じます。わたしは誰か個人を攻撃するという意思はありませんので、特定の個人をとやかく言うことは基本ありません。複数の人が発したある主張について批判を行うということは当然ありえます。いろんなことに触れて感じたことを書いているわけですから。それは違うんじゃないのと考えるから意見を言うわけです。それが質の高いコミュニケーションにもつながると思います。もちろんこれは自分のことを言っているじゃないかなと思う人もいるかもしれませんが、実際その人そのもののことではないです。他にも似たような人がいますのでキャラは混ざっています。たった一人その人だけが言っているなら逆に批判する気は起きません。同じようなことを言う人がたくさんいるからこその批判のわけです。
ブログとかツイッターでは自分が言った内容について批判をされると、典型的なレスポンスは、批判に反論をするのではなく、「自分は正しいと思うことを勝手に書いているだけだ。ほっといてくれ、気に食わなきゃ読むな」というものです。とても幼稚なレスポンスです。ネットで誰にも読めるように発言している重みがわかってらっしゃらない。それも堂々と主張をなされているのに。人間だから間違いや勘違いもあるでしょう。また考えてもいなかった受け取り方をされることもあるでしょう。それは当然のことで、開かれた場所で発言する以上は常に誤解の可能性をはらんでいるわけです。批判されて驚くほうが認識が甘いのです。ただあくまでもそれは論理的な批判の場合です。ネットなどでは個人を特定したらそれは人格否定と非常に近いものになります。個人を特定して批判でなく誹謗するのは最低だと思います。たとえそれが幾ばくの批判を伴っていたとしてもです。批判はどこかに行ってしまい誹謗しか残りませんから。
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