学歴

2013年08月25日
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日々の雑感ーリタイアライフ
学歴で生涯が決まるという世界もある
卒業時の席次とか
国家公務員の受験の席次とか
これなどそういう仕事を選べば生涯ついて回る
そういう人にとっては学歴は極めて大切なものだ
 
前の会社にくずさんというおっさんがいた
わたしよりちょうど10歳年上で
本当に屑という名前ではなくここでそう呼ぶだけだ
 
くずさんは千葉大学の工学部出身であった
そして財閥系のM電機に就職したが
数年で辞めて、それで転職してきた人間だ
転職の理由は誰も知らんが
彼の話から想像するに千葉大学では引け目を感じたからのようだ
東大はじめ一流大学ひしめく名門企業では
千葉大程度では出世は期待できない
それで、大手とは言え外資系企業なら、自分の学歴でも十分通用すると思った
(たぶん)
それが転職の動機(たぶん)
 
だが
お世辞にも仕事ができると言えない、世間ずれした人で
それで全然出世できなかった
それがくずさんにはおもしろくない
 
その上司のいわちゃんは聞きなれない大学の出身で
なんで、俺がいわちゃんの部下なんだ
おれがいわちゃんの大学に行ったら教鞭を持つレベルなどと
そんなこと言うのでいわちゃんといつも喧嘩になっていた
 
くずさんは
「ハルトモ君は○×大学の出身だから、あなたはまともな人です」
などともわたしによく言っていた
一応わたしもそれなりの知名度の大学を出ているからだ
大学名だけで、まとまかどうかわかるんだと
そう思うだけである意味凄い
 
くずさんは
自分が学歴にふさわしくない扱いを受けている、
自分はもっと評価されるべきである
いつもそう考えていた
それが実際行われていない理由はなぜと思うか?
とわたしが聞くと
いろいろ言うが
おかしな会社である、というのが結論だった
だからこの会社は駄目なんだよ、いつまでたっても成長しないんだよ
そう言っていた
この会社がダメだという点ではわたしも同意したが
くずさんが会社を変えることは決してなかった
自分の仕事も芽が出ない
その理由はいつも自分以外の何かであった
 
そのくずさんには専業主婦の奥さんがいて
その奥さんも千葉大学の出身だった
その奥さんとくずさんと、協力して一人息子の教育に心血を注ぐこととなる
千葉大X千葉大でどこまで行くか?
よく模擬試験の成績など聞かされた
他人の息子の模擬試験の結果など何度も聞かされてもしょうがないが
くずさんは一生懸命話していたな
 
自分は千葉大の工学部で肩身が狭いばかりに
名門企業を離れて、
それで自分の価値が理解できないおばかな会社に勤める羽目になった
自分の息子にはそんなみじめな?思いはさせたくない
そうくずさんは信じていた
 
まさに息子の受験勉強は
自分の敵討ちの反撃ののろしであったかのようだった
そして何年かして
くずさんの子供は 見事東大の工学部に合格した
その時のくずさんの喜びようと言ったらなかった
 
その息子にわたしも一度会ったことがある
家のエアコンをわたしに1万円で売るというからくずさんの家まで取りにいったのだ
ちょっとがり勉という感じの子供だったが、きちんと挨拶もできて
良い子供だという印象だった、親はどうあれ今後自分で生きていくわけだから
親の間抜けな価値観からうまく決別できるといいな、
そう思ったがもちろんそんなこと口に出していうわけもない
 
その一万円のエアコンは
実は家のエアコンが要らないからハルトモ君にくれてやると奥さんに言って
わたしに譲ったものだ
奥さんはただで上げると思っているので
「こんなもので良かったら使ってくださいな」などと言う
わたしは奥さんの前で財布から一万円を出そうとすると
くずさんは大慌てで、外に連れ出された
金は後でいいと、
 
まあ、なんでもいいが
いろいろ立派なことを言う割にはやることことが姑息であった
そのくずさんは会社の交通費もよくちょろまかしていた
規定に達していないのに今日は出張日当をつけてください
などと勝手に決めていた
やるにしても、おバカである
ちょろまかす人間はたくさんいるが、やはり間抜けな人間は
ちょろまかしたかも間抜けだ
これじゃ、偉くなれっこないな、そう思ったもんだ
 
話を戻すと
見事東大工学部に合格したくずさんの息子はひとまずめでたしだが
くずさんは、もうこれで生涯が保障されたと確信していた
きっと一流企業に就職して
学歴にふさわしい扱いを受けて
順調な人生を歩むはずだと
 
冒頭に書いたように
確かにそういう世界もあるが
そこはとても狭くて不自由な社会だと言うことを
くずさんはたぶん重要視せず美化している
 
息子がそれに気づくかどうかは知らん
どうでもいいことだ
 
そのくずさんは結局早期退職で会社を辞めてしまった
その後の消息はヨウとして知れない
 
くずさんが辞めて、何年かして
外からヘッドハンティングで採用されて
社長ということで
けいちゃんが入社してきた
わたしはここで誰でもちゃんとかさんとかつけて読んでいるが
別に愛称というわけでもない
アルファベットより読みやすかろうという配慮で
別にちゃんづけしたから親しいわけではない
 
けいちゃんは
アメリカ育ちでネイティブのような英語を話す
東大経済学部卒でN自動車出身で
ハーバードのビジネススクールにも留学していた
 
けいちゃんは自分が自分にふさわしくない扱いを受けている
そんなことをよく言っていた
本人は意識していないかもしれないが
わたしはくずさんの一件があったので強く印象に残った
 
けっきょくけいちゃんは数年後会社を去ることになる
事情はいろいろあるが
棲みやすい場所ではなかったということだ
 
恵まれた家庭に育ち
高い教育を受け、高学歴を得ると
こころのどこかで自分はそれなりの価値ある人間で
その価値にふさわしい扱いを受けるのが正当である
そう思うようになる傾向
これは人間には誰でもあるのかもしれない
 
そう思う人はそのロジックが通用する世界から
出ないように注意すべきということか
出るのも一興だけどね
 
わたしは実は自分の学歴については
良い印象は持っていなかった(今はどうでもいいが)
もちろん自分の学歴をひけらかすことなどない
 
わたしの生い立ちを考えるに
もしもわたしに恵まれた家庭と教育環境を与えていたなら
相当の大学に入っていたのは間違いないと思う
だが、その一方で、こと経済的な面だけでも
いまわたしのようになれた可能性は
ほとんどなかったと言えるくらいだろうと思う
 
きっと、わたしも自分の高学歴にふさわしい扱いを受けるべしと
そうこころの片隅でも思っただろうし
そういう考えが邪魔することも実は多いのだ
高学歴を持つと、じつはそこはラットレース
ねずみがたくさん狭い通路に向かって一目散駆ける世界
 
わたしは嫌いだ
そこがはなから選択肢にない良さというのもある
でもこれも今だからこう言えることで
どう考えても統計的には
恵まれた家庭に育った人間のほうが経済的にも豊かになる
貧乏人は貧乏から抜け出せない
それが現実だ
 
ハルトモはレアケース
まあそういうことになるんだろうが
さすがに偶然の賜物ではないとは思うけどね
 
わたしは幸い自分の棲む世界に制約を受けないという強みがある
棲む世界に対しての帰属意識がないのだ
どこかに行ったら怖いとか危ないとか全然ない
まこと自由である
わたしはこれからも
いろんなことをするんだろうな
たぶん
 
 
 
 
 
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Comments 2

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トール  

No title

自分探しが最近は流行りですが、その根底にあるのは帰属意識かも知れませんね。自分を変えたい人もおおいなか、ハルトモさんの精神の強さを感じました。これはどこから来たのでしょう?

2013/08/26 (Mon) 13:29

ハルトモ  

No title

帰属したくない世界で育ったからじゃないですかね?

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