その株価、割安? 割高? NPVを勉強したい

2020年08月22日
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株式投資
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ホームコースの、とあるホール
手前に大きなバンカー、奥にもバンカー
正確なポイント狙いのショットが要求される
株式投資も同じだというお話を一席

リターンまで含めたプロジェクト管理の経験のある方ならNPV(Net Present Value)という言葉はご存知だと思います。いくつかの全く異なるプロジェクト(投資案件)の価値を比較するための手法です。あるプロジェクトは100億円の投資資金を必要とする、その100億円を7年で回収して10年後には150億円15年後には200億円になると見込むプロジェクトがあるとする。一方で70億円の投資資金を必要として、5年で回収して8年後には100億円になり、10年後には120億円15年後には150億円になるプロジェクトがあるとする。ふたつは選べない。どちらが有利な投資対象先か? これを判断する指標となるのがNPVのわけです。わたし自身が現役のビジネスマン時代はすべてのプロジェクトをこの指標を使って判断していました。

この考え方はM&A、つまり企業買収にも使われています。結局この会社はいくらで買う価値があるのか?ということです。まったく業界も業態も違ういくつかの買収案件を比較する時に使います。それで敵対的な買収でもする時に、株主に提示するTOB価格を決めて提示するわけです。そのTOB価格ならソロバン勘定に合っていると判断したことになります。多少わかりやすく説明しましょう。100億円を投じてある会社を買ったとする。その会社が毎年10億円の利益をあげてるとすれば、ざっくり元手の100億円を取り返すのに10年かかるわけです。わたしはこの10年というのはひとつの目安だと思います。PBY(Pay back years)と言います。5年はうま過ぎる話だし、20年だとやってられない話だとなります。例えばトヨタが毎年2兆円の利益をあげるとする。そのトヨタの時価総額が10兆円なら安すぎるし、40兆円なら高すぎるという話です。時価総額を発行株数で割れば株価が出ます。

ここまで読んで、なにか気づいた方は多少株の知見がおありでしょう。あれ、それってPER(株価収益率)のことじゃないか。その通りです。よくPERが15が目安とか言われますけど、なぜ15が目安か、その意味をご存知の方はどれほどおられるのでしょうか?15というのは15年という意味なのです。もちろんPERというのは直近の決算数字からはじきだしただけのことで、その会社が全く成長せずにずっと同じ利益レベルを続けたらなら15年で回収できますと言っているだけで、実際企業は成長していくことを求められますので将来の利益はまったく違う計算になります。ただ大雑把に言うと将来の利益増加を見込むので、15というのは8とか10あたりになって、それでわたしが上に書いたように10年というのは目安になると言っている数字と整合するわけです。成長が見込めない会社と成長が見込める会社のPERは数字の意味がまったく違うことになりますね。以上あくまでもそういう考え方だということです。

当然ながら株価には期待値も折り込まれますから成長期にある会社は、株価収益率的には目安からまったくかけ離れた数字になったりします。でも永遠に急成長を続ける会社はありませんので、かならずどこかで成長は安定期に入ります。その時に市場規模とかシェアとかからその会社がどこで安定期に入るかを見れば、最終的な着地点というのは見当がつくと思います。先日わたしは市場のあり方とかシェアを見ることは重要だと書いた話とここで繋がっているわけです。

株式投資をする時には、そんな細かな計算をする必要はありません。数字なんて大きく変わります。適当な目標を掲げる経営者も多いでしょう。ただこういう考え方を頭に入れておいて、ざっくりと見るということです。あまりに変な数字は警戒すべきだし、その中にうまい話は隠れていたりしますけど、隠れているうまい話というのは、これは過去の数字から探すのではなく、将来の見込み数字から探すものだと思います。

この会社将来伸びそうだ、、なんて漠然たる話ではなく、この会社がいる市場規模は現在の100億円から10年後には1000億円に伸びるだろう。トップ企業としてシェア40%を維持して利益率25%維持できれば100億円の利益を毎年生み出す会社になるはずだ。その時には時価総額は1000億円から1500億円でもおかしくない。だから株価はいくらまではいけると見込む。例えばなんですけどわたしなんかはこうやって考えて投資をしてるわけです。

NPVを勉強すると必ず割引率という言葉も出てきます。10年後の1000万円はいくらの価値があるかということです。5年後の800万円とどっちが上ですか? なんて話も気が向いたら書いてもいいかなと思いますけど、それにしてもこの話面白いですかね? 面白い面白くない前に何言っているかわからない人多くないでしょうか? まあパッと読んでわかる程度の話で儲かれば世話はないですよね。



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Comments 2

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samukun  

勉強になります

いつも示唆に富む記事を掲載していただきありがとうございます。
今日の記事も勉強になりました。
平均PERが15倍に落ち着く理由が良くわかりました。
まさに「市場原理恐るべし」です。
ハルトモさんは難しいお話を平易に説明できる類まれな才能の持ち主です。

株式投資は結局企業経営と同じであり
経営者と同じ目線に立たなければ利益を上げる事は出来ないという事ですね。
本来企業経営と長期投資は利害が一致するはずなので非常に合点のいくお話です。

PERは通常今期予想純利益から算出されており
数年後の予想純利益に基づく予想PERと乖離があれば投資チャンスがあると考えています。
PERの数値だけをみて高い安いといっている人がなんと多い事か!
でもそういう人が多数存在するために投資チャンスが生まれるので皮肉なものです。

気が向いた時で結構ですので
予想純利益を算出する考え方をくわしく記事にしていただけないでしょうか?
自分の頭で考えろと突っ込まれそうですが(笑)
凡人は達人から教えを乞うしかありませんのでお許しくださいm(__)m

ハルトモさんの記事こそ有料にしても良いと思うのですが
この価値に理解できない人が多いので無料で読めている。
ラッキーなことです。

2020/08/22 (Sat) 12:14
川口晴朋(ハルトモ)

ハルトモ  

To samukunさん

まあ非常に端折った話です。実際の財務は税処理もあってかなり複雑です。さらに投資をする上での一情報にすぎませんけどやはり知っていたほうが良いというところかなと。

将来の利益を予測するのは、かなり地道な作業になります。精通した業界で独自に地道に積み上げます。よほど業界に詳しくないとできませんので、真似はなかなかできないと思います。自動車メーカーの決算の実態はある程度予測できます。車の出荷台数が公表されてるからです。車種ごとの利益率を押さえていれば予測可能ですが、自動車メーカーはいろいろ操作するのでそこを予測するのが難しい。あえて大きな赤字を出したりむりやり黒字にしたり。財務ってのは怖いですね。

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