わたしの認知症患者への接し方

2020年07月29日
7
年寄りの面倒をみること
以下はあくまでもわたしの経験であり、誰にもあてはまることでもないかと思います。ご自身のケースについてはよく医療関係者、ケア関係者にご相談され、かつご自身でよくお考えになったらよいと思います。わたしは自分なりに考えて行動しました。プロのいいなりになることはないと思います。自分の親なら自分が一番よくわかっているはずですから、参考にしながらも自分なりのスタイルがあって当然だと思います。


わたしくらいの世代になると、親の介護は深刻な関心事で、その中で認知症というキーワードなくして介護は語れない。わたし自身はしみちゃんとしげちゃんと二人の重度の認知症患者を看取った。最後は頭の中はすっからかんだったけど、最後までハルちゃんハルちゃんとわたしを慕ってくれた。ふたりともわたしのことが大好きだった。ハルちゃんと言えないならハルちゃんだよと自然に伝えればいいのだ。よくわたしは誰でしょうとか?確認したがる人間がいるけど、そんなこと聞かないほうがいい。答えを言えるなら馬鹿にされていると思うだろうし、言えない時に恥をかかすことになる。認知症患者であろうがなかろうが、人生の先輩である年寄りを試したり恥をかかせてはいけないとわたしは思う。

15959848850.jpeg

しげちゃんは認知症になって、不安定な時期が続いた。でも自分は守られているんだ、なんの心配もないんだ、ということが伝わることで次第に気持ちが穏やかになっていった。離れているところで本人に聞こえないだろうと思っていろいろ話すと、その表情をネガティブに解釈して悪口を言っていると疑うのが認知症である。わたしが現れるといつも朗らかで、誰と話していても悠然としてなんの心配もないように見える。それを見て年寄りは安心したんだと思う。

それとこれはとても大切なことだけど、認知症の年寄りは死ぬことそのものが怖いんじゃなくて、自分がどうなっていくかわからないから心配なんである。それは死んだ後を含めてである。わたしはしげちゃんには死んだ後の話をたくさんした。毎週施設に見舞いにいくんだけど、必ず、お墓参りに行ってきたよ、から会話を始めた。認知症だから前の話なんて覚えていない。それでこんなきれいなお墓だから、いつしげちゃんが入っても大丈夫だからね、と言うと、そうかね、うれしいねえと屈託なく笑う。でもそんな慌ててこなくてもいいよって、エイイチは言ってたよと続ける。エイイチというのはとっくに死んだしげちゃんの連れ添いでわたしの親父だ。しげちゃんは、そうだね。おとなしく待ってなと言っておいてとやはり笑って答える。

お寺にも挨拶にいったよと言う。住職さんはしげちゃんのことよく覚えていて、お迎えがきたらすぐに駆けつけてお経をあげてくれるんだよ。さいたままで清水から来るんだよ。それを聞くとそうかね、忙しいのに悪いねえ、なんて言う。大丈夫だ、それが仕事だ、なんてわたしが言うとまた笑う。こんな調子で知らない人が聞いていると縁起でもないと思う人もいるようだったけど、少なくともわたしとしげちゃんの間では明るく真剣に未来について語っていたわけで、できもしないのにしっかりしてねなどと暗い現実を語るよりはるかに前向きで、とても楽しい時間だったと思う。実際すごく喜んでいた。

しっかりしてとか、頑張ってねとか、そんなことわたしは決して言わなかった。なんの心配もなくボケていいからねといつも言っていた。全部ハルちゃんが面倒見るからね。ここでいつまでも好きなだけ生きていいからね。そんでいざお迎えが来たら、葬式から墓まいりから法事まで、ばっちしやるから、安心して死んでいいよと、これも冗談みたいに話した。本人は、そうかい、それは楽しみだねえ。なんて笑ってこたえてくれた。

最後しげちゃんはわたしに看取られて自然死で逝った。自然死でその瞬間を看取ってもらえるのはかなり幸せだと思う。そしてしげちゃんの葬式は約束通りそれは立派にやらせていただいた。弔問客はほとんどいないけど、しげちゃんはとても喜んでくれた。だって枕元にありがとうって笑顔で挨拶にきたからね。結局その人が喜ぶようにしてあげればいんだと思います。それがちゃんとわかるかですね。




関連記事
ハルトモ
Posted by ハルトモ
自由人ハルトモ。那須とさいたまを毎週往復するリゾート&リタイアライフ、そして旅、投資ネタもありのブログです。
自己紹介へ

Comments 7

There are no comments yet.

zukamifu  

とてもいい話。もっと広まるべき考え方だと思いました。

私も先日から母親の介護見習いをしています。私は実家に帰ったらまず、仏壇に線香です。そして亡き父と祖父母に感謝します。それを母親は見ていて、私が死んでも同じようにしてくれるかと尋ねきたので、お袋の時は心で感謝を言うのでなく、声に出して2回以上、ありがとう。ありがとうって言うよって。

二人で笑いました。
母は安心したようです。

死んだ後も大丈夫だからと伝える事は大事な事だと改めて思いました。

2020/07/29 (Wed) 12:18

トール  

目もと

ハルトモさん、目もとがじわりと熱くなりますね。

2020/07/29 (Wed) 12:50

N  

いつか自分の親を見送るときに、きっと覚えておきたい話でした。ありがとうございます。
なんと素敵なエンディングですね。

2020/07/29 (Wed) 21:33
ハルトモ

ハルトモ  

Re: タイトルなし

わたしは誰にも教わらずに自然に出来たんですよね。ちなみにしげちゃんは他人ですけどね。

2020/07/29 (Wed) 22:08
ハルトモ

ハルトモ  

Re: タイトルなし

認知症というのはまさに今を生きるわけで、良い面もあると思いますね。つまらない悩みや不安は消えますからね。
記憶も消えますけど、、この写真のモンブラン、食べた後に何も食べてないって言うんですよ。

2020/07/29 (Wed) 22:13

負け組投資家  

>以下はあくまでもわたしの経験であり、誰にもあてはまることでもないかと思います。
本当にそのとおりです。本人の症状で病院や施設の対応も違ってくるし・・・
同じ認知症の家族を介護してても症状も家族が耐えれる限界も違いますからね。
我が家は祖父母の看護・介護で日常がぶっ壊れましたから・・・
もう二度とあんな地獄は経験したくないです。俺にとっては完全にトラウマです。

2020/08/01 (Sat) 08:23
ハルトモ

ハルトモ  

Re: タイトルなし

それはご苦労様でした。当たり前ですが人生いろいろ、酷い例はわたしもいくつも知っています。徳を積んだと思うことをお勧めします。

2020/08/01 (Sat) 09:52

コメント投稿