データ偽装スキャンダルで株価を下げた会社は買いか?

2020年06月27日
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株式投資
優良企業と思われていた会社が、投資家から見ればある日突然スキャンダルとして露見する、データ偽装スキャンダルである。企業としての信用は大いに失墜して株価は大きく下がる。株価が下がってみるとバーゲン価格に見える。ちゃんと解決すればいずれ株価は回復するのではないか?こう思う投資家がいるのは当然だと思う。確かに安いので買いたくなる気持ちはわかる。

わたしは自動車用センサー開発などをする技術の会社で長く働いていて、いろんなそれこそ怪しい綱渡りのケースも見てきたから言えるけど、こういうスキャンダルはかならず会社の上層部が何らかの形で絡んでいる。サラリーマンは上に行くほど逃げたりとぼけたりするのが上手だけど、上層部が全く知らないデータ偽装はほぼないと思ったほうが良い。いわゆる暗黙の了解というのもある。あるいはやっているなとわかっていても気づかぬふりとか。似たようなことを繰り返して出世する、そういう人間が出世する会社というのは、企業体質として危ないものを持っているということになる。

実際データ偽装をするような会社は他にもやっている可能性が高い。これからは止めようと思ってもすでにやってしまっているものは隠すしかない。だから事件として明るみに出て膿をを出し切るなどと言ったところで、実はこんなに他にもやっていましたなんて関係ないものまで自ら発表する会社はない。発表しないとバレるものは発表せざるを得ないけど、逆に他のものは隠蔽工作に走る。全部出したらそれこそ会社の存亡に関わるからだ。その隠蔽工作はまず成功する。そんなに次から次へと露見しない。データ偽装が発覚する理由の多くは内部告発だけど、サラリーマン生命をかけて行う。正しいことでもその人間の出世はほぼなくなる。そういう勇気のあるサラリーマンはそんなにいない。だから次々とは発覚しない。

じゃあ株価は戻るのか? と言うと、もちろんケースバイケースだが、たぶん戻る。長期的な業績への影響はそれほど大きくない。ただ長期保有はすべきではないとわたしは思う。ほとぼりが覚めたころ忘れかけたころ、また事件が起きる可能性があるからだ。そんな危ない会社をわざわざ買って儲けようとしないというのがわたしの投資の基本姿勢だ。他にちゃんとしている会社はいくつもある。実際自動車メーカーを見てもやる会社は何度もやる。取引先としてつきあっていて、ああこれでは危ないなと実際感じる。

具体例を話そう。わたしがまだ一担当者だったころ、さる自動車メーカーからエンジン制御用のセンサーの受注に成功した。だが仕様の詰めの段階でもめる。お客は±1%の出力精度にしてくれと言い出した。どうやらそうでないとシステムが成立しないとわかったようだ。当初の約束は±3%。当時は技術的に1%はできなかった。センサーの精度はシステムの性能に直接関与する重要な仕様だ。それでお客と話して出荷する時に全製品に出力特性をA,B,Cと三種類にわけて表示して納品することを提案した。1%づつ三つにわけるというわけだ。それでデータごとにお客のエンジンコンピューターで補正をかければなんとかシステムが成立する。

そういうわけで無事に受注に成功。自動車部品の場合受注に成功したと言っても、実際出荷が開始されるのは一年以上先である。これは知らない人間に説明してもしかたないけどそれくらい車というのはいろいろやることがある。そして無事に出荷が始まる。そのエンジン制御システムは新しいシステムで将来技術の先取りをしたものである。だからこそ自動車メーカーは世界初の栄誉が欲しかったのだろう。

出荷開始して1年かそれくらいたった時に、わたしはあるニュースを我が社の品質保証部の担当者から知らされる。たまたま別件で我が社の品質保証部の人間がそのお客のところに行って、製造現場に足を踏み入れる機会があって、そこで自社のセンサーがどのように取り扱われているかと目にしたのだという。その内容は驚くべきものであった。

今回はかなり長くなると思うので続きはまた別に書きます。まだ書いてませんよ。出し惜しみしているわけじゃないです。
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