敵対的交渉術
2018年05月19日
およそ7年住んだ老人ホームからの退去にあたり原状回復費用として、身元引受人のわたしが老人ホームから受けている請求の中身をまとめると以下のようになる。
1、壁クロス全面張替え 8万円
2、床クロス全面張替え 8万円
3、付帯設備などの交換 4万円
4、居室および設備の清掃消毒 2万円
退去費用の算出あたっては、入居契約書に取り決めがあり、それに従い判断することに両者とも合意した。
入居契約の要点は、通常の使用での経年変化=通常損耗は貸主の負担、故意過失による通常の使用を超えた破損=特別損耗は借主の負担となっている。これも両者とも争いがない。
退去に際してわたしと老人ホームの施設長立会いの上で居室の確認を行った。その際に施設長からは特別損耗として壁面の汚れ3箇所が指摘された。
わたしはその3箇所について特別損耗ではなく通常損耗であると反論した。窓口は本部に移ったが、老人ホームの本部からは特別損耗であるとの反論がまた返ってきた。本部はまた同時に契約書どおり進めることも確認した。
両者平行線であるので、わたしは民事調停に持ち込むことにした。
こういう流れである。
さて、わたしは相手の特別損耗であるとの指摘箇所に対して、いや違うだろうこれは通常損耗だろうと反論したが、本来話の順序はそうあるべきではない。
通常損耗は貸主負担、特別損耗は借主負担とすでに決まっているのだから、老人ホームの請求の中身をまず項目ごとに通常損耗か特別損耗かを判断して、その判断に争いがある部分だけを話しあう。これがあるべき流れである。
それを何故、そうせずに、ある項目の詳細についてわたしは反論をしたか?
それは老人ホーム側が自分が不利だと気づいていないからである。
項目ごとに判断していくと、老人ホーム側がそれほど請求できる項目がないことに気づく。上の1から4のうちすでに2から4は請求の根拠がない。1の壁紙だけだと自分で言っているのである。
それをもしわたしが最初から指摘したらどうなっていたか? 老人ホーム側は自分が不利であることに気づき、やはり床や設備も特別損耗だと主張を始めるだろう。不利だと気づけば主張の根拠を変えるのは大いにありえる。あの老人ホームの体質からすればまず間違いなくやるだろう。
だが退去の立会いからすでに1ヶ月経過してさらに話し合いもここまで進み写真もやりとりの記録も残っている。このまま裁判所の民事調停に持ち込まれて、そこに至って、やはり部屋をよく見たら床も傷んでましたとか設備も壊れてました、だから特別損耗です。そんなこと言えるわけがない。言っても誰も聞かないだろう。たぶんもう工事をしてしまっている。
わたしは民事調停では本来の話の順序に従って進める。まず項目ごとこれは特別損耗これは通常損耗と判断する。その進め方について反論のしようはたぶんない。老人ホーム側は壁紙以外に特別損耗と指摘もしていないだから、22万円の請求のうちすでに壁紙8万円以外の請求根拠を失っていることに気づくだろう。壁紙についても部屋に壁は4面あって、傷があったのは1面だけである。全部わたしの負担にできるわけがない。
とまあ考えているけど、これはどうなるかはやってみないとわからない。
これがわたしの敵対的な場合の交渉の進め方である。
少なくとも相手よりはかなり賢いだろう。
最初からゴールを見ている。ただ正しいことを言えば良いでもない。どんな相手と交渉しているのかよく考えて自分の言い分を決めることである。もともと良心的に話し合いがつく相手ではないのだから。
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