日本で革命が起きない訳
2018年01月09日
日本の庶民というのは金持ちの家に生まれてそのまま大した努力もせんで金持ちの人間より、努力してのし上がった人間をむしろ嫌う傾向がある。あの方は育ちが良いとか、、言う一方であいつは成り上がりだ、とか成金だとかと揶揄する。もちろん使えない金持ちをおぼっちゃんとバカにする言い方もあるが、どことなく敵意は薄くて、お嬢様なんて好意一辺倒だ。成金にはむしろ敵意を持つ。ところがその成り上がりも誰もが凄いというレベルになると急にまた好意を持つ。豊臣秀吉とか松下幸之助とかをバカにはしない。庶民が嫌うのは自分より下にいた人間が自分が羨ましいと思える程度に近く上に行った場合である。
近代日本文学の代表作をいくつも書いている芥川龍之介。蜘蛛の糸という誰でもたぶん知っている小説がある。この小説の解釈はたぶん専門家がいろいろ言えるのだろうけど、読んだ読者のほとんどは、自分だけ地獄から逃れ出ようとした主人公に悪意を持つ。そしてその悪意が晴らされるように主人公は再び地獄に落ち、続いたものもみんな落ち、誰も助からない。その結末に読者は納得する。自分だけ助かろうという根性が悪いから罰が下ったのだと。だがよく考えてみれば地獄のようなところからみんなで仲良く抜け出せるはずもない。誰かが助かるより誰も助からない方が好ましいと多くの読者は考えるのである。
この世で多くの人間が貧乏であえいでいるのに、誰かがうまいことやってのし上がるのは気分が悪いが、代々自分たちを搾取をする富裕層の存在はそれほど腹が立たない、という日本人の感情はまさに蜘蛛の糸を読む読者ではないか。そうなると作品の枠を出て読者までもが天才芥川の術中にはまっているのかもしれない。読者だって自分の前に蜘蛛の糸が垂れてくればやはり登るのであろうから。それにしても作中のお釈迦様の性格も相当悪いぞ。あれはお釈迦様のふりをした富裕層かもしれない。
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