払う人貰う人

2017年09月21日
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マネーと生活
ひさびさにいわちゃんに会った。タイで王様のように暮らしている前の会社の上司である。実際に会えばいわちゃんなんて呼ばない。ちゃんとさん付けである。日本に帰っているので一杯やろうとLINEをもらったというわけだ。

わたしは前の会社の人間にこちらから連絡を取ることはない。仕事に興味はないし、サラリーマン的な会話はもう十分である。もっともずいぶんリストラされて知っている人間はあまり残っていない。そう言えばわたしと年が同じくらいの人間がリストラにあって、それで悔しくて前の会社を見返してやりたいと、移った会社で頑張ってなんかマネージャのポジションを得たと聞いた。それで見返しましたよ、と本人は納得していると。そういう話がいわゆるサラリーマンの会話である。

どうでもいいだろうって話だ。むしろリストラされて羨ましいなんてわたしは思うくらいだ。わたしはリストラされる前に自分で待ちきれずに辞めてしまった。待っていればいくらか割り増しの退職手当はもらえた可能性が高かったと思うが、こっちの都合で児童養護施設に行くと決めたのである。結局それで良かったと思う。最後まで会社の都合に振り回されるのはまこと馬鹿馬鹿しい。ましてや辞めてもブツブツ言ったり見返すなんて無駄なこと。

それでも先日の韓国の友人やいわちゃんのように向こうから連絡をくれるのは嬉しい。いわちゃんとはお互いサラリーマンの時からしけた会話はなかったしね。

いわちゃんと話していて、それでわたしが昔話をしたら、よくそんなこと覚えているなと驚かれた。いわちゃんがこういうことをわたしに四半世紀も前に居酒屋で話したのである。

子どもの頃、家が借家住まいで毎月の家賃を大家に現金で納めていたが、そのお金を毎月持っていくのがいわちゃんの仕事であった。それで持っていくと大家が出るが、その大家がボケーとしてどう見ても賢そうに見えない。だがこっちはお金を渡す方、向こうはもらう方、プラスマイナスで凄い差になる。毎月やっていていわちゃんが子供心に思ったのは、人間は賢いとか頭がいいじゃない。もらう方になるか払う方になるかである、ということ。

その後いわちゃんの家は成功してずいぶんともらう方になった。いわちゃんも今はたくさん家を相続して十分もらうほうだし、もちろん年金も十二分にもらっている。まったく見事な、もらう方の人間である。

この話はわたしもよく覚えていて、もちろんいわちゃん本人も話の中身はよく覚えているのだが、わたしとか他の人間にその話をしたことは覚えていないし、たぶんその場で聞いた人間でも誰一人今は覚えていないと思う。だがわたしは覚えている。まさにいわちゃんを語るエピソードだと思うけど、それを覚えていてずっと忘れないというのがわたしである。

いわちゃんからその話を聞いて、だからと言うわけではないが、わたしも払う方はあかんな、もらう方にならねばと思った。払ってあかんのは、家賃とか借金のローン金利とか、あるいはさまざまな搾取につながる費用。もらう方は黙ってなにもせずに入ってくるお金という意味。払う方ともらう方の差はとんでもなく大きいのである。

ほとんどのサラリーマンは払うほうの人になる。最後に年金を貰うことですこし取り返すがそれも怪しい御時世だ。払う方にいることでそれを悔しいとかなんとか抜けだしたいとか、そう強く思う人間がまた少なくて、むしろそこですこしでも多くいただきたいと望む。それこそ会社の評価に一喜一憂して、やれ会社を見返すだなどという馬鹿げた話を熱心に語るのであれば、まあまったくご苦労なことである。

いわちゃんがゴルフをやろうとさかんに言う。今のスコアはいくつくらいですか?と聞いたら125から126だって。そんな答えがあるんかいな。確かにそのスコアだとわたしのように一人で行ってプレーというのは難しい。それにいわちゃんは車がない。ゴルフ自体は乗り気はしないがお付き合いすることにした。いわちゃんの自慢話はずっと聞いていて飽きないからである。人の自慢話を心地よく聞いていられるようになったら大したものだとそれは思うね。




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