拡大循環

2015年12月19日
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児童養護施設のこと
娘の誕生日祝いという名目でiPhone6Sをわたしが一緒に行って買ってやった。もちろん毎月の料金も親が払っている。それで終わりのはずなのに娘はうまいことかみさんに話して2万何千円かする靴を買ってもらっている。おばあちゃんからも一万円誕生祝いでもらっている。軽く10万円を超える。

わたしもかみさんも欲しいものはパッパカ買うのであるから、娘だっていろいろ立ち回って欲しいものは手に入れたいだろう。この感覚がおかしいのかと言うと、実は児童養護施設にいる子供たちも、欲しい欲しいである。ただ買えないだけである。買えないから余計買いたい買いたいとなる。結局みんな物は欲しいのである。差は買えるか買えないか。

ではたいていの物は買ってもらえる我が家の娘と買ってもらえない施設の子供とで、どっちがものを大切に扱うかというと、わたしの娘のほうが丁寧である。施設の子供は物の扱いも雑だし、さらに住んでいるホームの備品の扱いも粗雑である。(もちろんそうでない子もいるけど=いい子だ!)

ということでなんでも買ってもらえると物のありがたみに感謝する気持ちがなくなり、買ってもらえないと感謝して大切に扱うという世間一般の常識はちと違うと思うようにわたしはなった。

たぶんこども自身が大切に育てられたかどうかである。いくら金があって物はいくらでも持っていても、十分手間をかけずに大切に育てられていなければ感謝の気持ちは育たない。一方いくら貧しくてもきちんと手間暇をかけられた子供はその中で感謝の気持ちを学ぶ。ただいくらか金があったほうが感謝の気持ちは育ちやすいだろう。貧しくとも素晴らしい家庭はいくらでもあるに決まっているが少数であることは間違いない。貧すれば鈍すという通り、貧乏であれば親の心だって荒みやすい。こどもを大切に育ててるとはなかなかいかない。それが最底辺の実態だ。

感謝の気持ちは充足感から来るから、満たされない心を持つ子供にいくら物を与えても物では満たされない。施設の子供はダブルパンチだ。自分自身が大切にされてきておらずかつ物がない。子供は心が満たされていないが物が得られればそれが満たされると勘違いする。 確かに物をもらった瞬間は嬉しい。だが大切に扱わずに壊れてしまうことも多く、そしてまた次の物を欲しがる。

娘は服とかは自分の趣味で新しいものを欲しがるが、時計とかバッグとかあるいは貴金属まで、けっこうかみさんのものを使っている。先日は男物の大きな時計が格好いいとわたしの時計をして出かけて行った。相当収入のある社会人というような出で立ちになっている。それで東京のランチグルメを友人と満喫している。毎日よいものを食べている。ランチだから安いとは言うがやはり1000円以上は当たり前、新橋でワンコインでランチというサラリーマンが多いと聞くからやはり娘は贅沢だ。

施設のこどもの特徴として、大切にされきていないのがたぶん原因で、大人に甘えることができないという点がある。何かを求める時にしばしば攻撃的になる。どら猫と言うと例えは悪いがぴったりの表現だ。だから可愛いいとは思いにくい子供が多い。ところがうちの娘は親でも親戚でもそれは上手に甘えるのである。自然と人を頼りにして甘える心持ちができている。だからつい買ってやっちゃんだよね。事実頼りになる親がいるのである。施設では仮に上手に甘えられたとしてもその結果買ってもらえるわけではないから、甘えるという行為を学ぶチャンスはない。こうやって両者はまったく別のサイクルに入る、良さは良さを生み、悪さは悪さを生むという拡大循環の結果、人間の考えかたとして大きな差がつく。

だが施設の子供もそんな悲観することはない。自分で買えるようになればいいのだ。なんでも好きなものを買えば良い。金や物が実は重要でないと気付くまで儲ければ良い。そして自分の子どもは金以上に手間暇かけて大切に育てれば良い。大切に育てるという意味はたくさん楽しい時間を一緒に持つことである。いくら一緒にいても叱ってばかり怒ってばかりでもだめ。一緒にいないのはもっとだめ。でも楽しい時間をたくさん持つには、金と体力と時間と気持ちのゆとりがいる。詰まるところどういう親かということである。
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Comments 2

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ムサシ  

No title

よく娘と買い物に行きましたが、子供も親の財布の中身が自然とわかるようで高額のものはねだらなかったですね。

それも少し寂しいのですが。

2015/12/20 (Sun) 18:53

ハルトモ  

No title

わたしの娘は遠慮なしですが、親の趣味というか価格帯からは外れてこないです。ただ大人が着るようなものは着ています。

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