金と物と価値観と
2014年12月20日
まず、金がない人は物が買えないだろう。あああれが欲しいなあこれがほしいなあ、といろいろ考えても金がないので買えない、絶対的に物がない。こういうのが貧乏ということだ。メガネが壊れても買えないとか、服が破れても買えないとか、今となっては笑い話だが、そういう生活を経験した人はそんないないでしょ。
たいていはその持っているものに満足できなくて、ああ高級車が欲しいなあとか、ローレックスが欲しいなあとか、高級オーディオがほしいなあ、そう思うが、実際車は持っているのだし、時計も持っている。オーディオだって持っている。値段を言わなければ今の人はたいていものは持っているのだ。
持つものと持たないもので大きく分かれるのは、家だろう。家はさすがに持っていない人は多い。特に都心部では一生買えない経済的な層は存在する。家だって買ったもののもっといい家に住みたいなあ、と思っている人はそれは多いだろう。
ようはどこで満足するか、ということなんだけど、そのレベル引きに大きく影響するのはつきあいのある他人だ。世の中で自分の絶対的な価値観を持っている人は少ない。相対的に考える人がほとんど。自分が出た学校の卒業生、みながいい車に乗っていれば自分も欲しいと思う、同窓会に出れば、ローレックスの腕時計をする同級生、羨ましいな、自分も欲しいな、と思う。お隣さんがハワイに行った、うちも行きたいなと思う。そんお隣さんも誰かが行ったと聞いて行きたくなったのかもしれない。
そういう人たちにとっては、持っているものでその人を見る目が変わるというのは当然のことだ。当然社会的な地位とか学歴も同じだ。学歴も肩書きも結局持っているものなのだ。そしてその結果、権威に弱いということになる。誰かがつけたランク付けに唯々諾々と従うということになる。
わたしが多くの人と比べて変わっていると言えるのは権威を怖れないということだ。人様がつけたランク付けでそのまま人を見るような思考回路がない。肩書きと学歴とか、持っているもので、人を判断することは、あることはあるのだが、皆がしているような見方ではない。
なぜこうなったかというと、自分が存在する社会そのものに懐疑的であったということかなと思う。この世の中はそもそもおかしいのではないか?そう子供の頃から考えていた。そう考えるようになった理由はいくつもあるだろうし、古い読者ならきっと得心がいくだろうが、要は油断ならぬ環境で育ったということだ。
わたしが言うところの多くの権威に弱い人は(自分では権威に弱いなんて思ってない)、子供の頃からこの社会の一員でいることを好しいと思って成長してきたに違いない、とわたしは思っている。優しい父母がいて、祖父母もいて、ひょっとしてそれほど豊かではなかったかもしれないが、それでも母の作ってくれた手料理やお菓子はおいしかった。学校の先生も優しかった。近くにいる誰かに騙されておかしなことになるなんて心配したこともなかった。大人のいうことを聞いていればたいてい間違いなかった。成長するに従いそれぞれの考え方を持ち出すのは当然だが、幼少の頃の精神的原風景として、これは生涯その人の中に残るとわたしは思う。
わたしは育ちが悪いと自分でよく言うが、それは貧乏だった以上に、大人のいうことを聞いていたらどうなるかわからないという恐怖感の中で育ったという意味が大きい。ただわたしの場合幸いなのは3歳までは普通に育ったので完全などら猫ではない。だから素直さと疑り深さが同居する複雑系のキャラになったと自分では思っている。自分が信頼する人にはとても素直だが、そうでない限りは簡単に人の言うことを真に受けない、というキャラだ。
もうひとつ大切なのは、権威への弱さは遺伝するということだ。遺伝というのは言葉の綾で実際は伝承だが、親がそうなら子供もそうなるということ。これは説明の必要もあるまい。そうなってくると、少数ではあるが、いろんな経緯で自分で自分の価値観で物事を考えるようになった人間の子供はどうなるか? というのも興味深い。
物を買うという話をしていたら、心に話になってしまったが、我が家にあるものというと、凄くはないけど、やはりそれなりの値段のものが多くて、同級生を見渡しても、恵まれた生活をしているほうだけど、だから比べて満足というわけでなく、自分で良いなと思うものを買うだけである。もっと良いもの高いものを持っている人をいいなあとか思うなら、また購買意欲も湧くのだろうが、なにせ、そう思うことなどない。誰も羨ましいなんて思わないのだ。
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